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2017-08-27

$f(X)$ を体$k$ 上の重根をもたない $n$ 次の多項式とし(既約とは仮定してません)、その根を $ \alpha, \alpha_1, \cdots, \alpha_{n-1}$ とする。 $$\xi = c\alpha + c_1\alpha_1 + \cdots + c_{n-1}\alpha_{n-1}$$ が、 $\alpha, \alpha_1, \cdots, \alpha_{n-1}$ の任意の置換によってすべて異なる値になるように有理数 $c, c_1, \cdots, c_{n-1}$ を選ぶことができる。
$$\alpha = \theta_0(\xi), \quad \alpha_1 = \theta_1(\xi), \quad \cdots\cdots, \quad \alpha_{n-1} = \theta_{n-1}(\xi)$$ となる、 $\xi$ の $k$ 上の有理式(実は多項式) $\theta_0, \theta_1, \cdots, \theta_{n-1}$ が存在する。

『ガロアを読む』では、はっきり定義されてませんが、次のように $\varphi$ が定義されていると思ってもいいようです。 $$\xi = c\alpha + c_1\alpha_1 + \cdots + c_{n-1}\alpha_{n-1} = \varphi(\alpha, \alpha_1, \cdots, \alpha_{n-1})$$ $\theta_0, \theta_1, \cdots, \theta_{n-1}$ の存在は、『ガロアを読む』では、ラングランジュの補間式を使う方法で証明されています。

$(\alpha', \alpha_1', \cdots, \alpha'_{n-1}), \ \ (\alpha'', \alpha_1'', \cdots, \alpha''_{n-1}), \ \ \cdots,\ \ (\alpha^{(n!-1)}, \alpha_1^{(n!-1)}, \ \cdots,\ \ \alpha^{(n!-1)}_{n-1})$ を
$(\alpha, \alpha_1, \cdots, \alpha_{n-1})$ の、どの2つも異なる順列とします。 \begin{eqnarray} \xi &=& \varphi(\alpha, \alpha_1, \cdots, \alpha_{n-1})\\ \xi_1 &=& \varphi(\alpha', \alpha_1', \cdots, \alpha'_{n-1})\\ \xi_2 &=& \varphi(\alpha'', \alpha_1'', \cdots, \alpha''_{n-1})\\ &\vdots&\\ \xi_{n!-1} &=& \varphi(\alpha^{(n!-1)}, \alpha_1^{(n!-1)}, \cdots, \alpha^{(n!-1)}_{n-1})\\ \end{eqnarray} として、xy座標上(x, y は複素数であったりしますが)の $n!$ 個の点、$(\xi,\alpha),(\xi_1,\alpha'),(\xi_2,\alpha''), \cdots, (\xi_{n!-1},\alpha^{(n!-1)})$ を通る多項式を求めると、対称性から体$k$ 上の多項式であり、$\theta_0$ になっています。これと本質的には同じ方法による証明が『ガロアを読む』に書かれています。
同様に、$(\xi,\alpha_1),(\xi_1,\alpha_1'),(\xi_2,\alpha_1''), \cdots, (\xi_{n!-1},\alpha^{(n!-1)}_1)$ の $n!$ 個の点を通る多項式といて $\theta_1$ が求められます。$\theta_2,\cdots,\theta_{n-1}$ も同様です。
\begin{array}{cccc} \alpha = \theta_0(\xi),& \alpha_1 = \theta_1(\xi),& \cdots\cdots,& \alpha_{n-1} = \theta_{n-1}(\xi)\\ \alpha' = \theta_0(\xi_1),& \alpha_1' = \theta_1(\xi_1),& \cdots\cdots,& \alpha'_{n-1} = \theta_{n-1}(\xi_1)\\ \alpha'' = \theta_0(\xi_2),& \alpha_1'' = \theta_1(\xi_2),& \cdots\cdots,& \alpha''_{n-1} = \theta_{n-1}(\xi_2)\\ \vdots & \vdots & \vdots & \vdots\\ \alpha^{(n!-1)} = \theta_0(\xi_{n!-1}),& \alpha_1^{(n!-1)} = \theta_1(\xi_{n!-1}),& \cdots\cdots,& \alpha^{(n!-1)}_{n-1} = \theta_{n-1}(\xi_{n!-1}) \end{array} が、成立しているこになります。
$$k(\xi) \subseteq k(\alpha, \alpha_1, \cdots, \alpha_{n-1})$$ は自明ですが、$\theta_0, \theta_1, \cdots, \theta_{n-1}$ の存在より $$k(\alpha, \alpha_1, \cdots, \alpha_{n-1}) \subseteq k(\xi)$$ であり、 $$k(\alpha, \alpha_1, \cdots, \alpha_{n-1}) = k(\xi)$$ が示されます。$k(\xi_1), k(\xi_2), \cdots, k(\xi_{n!-1})$ も同様ですから、 $$k(\alpha, \alpha_1, \cdots, \alpha_{n-1}) = k(\xi) = k(\xi_1) = k(\xi_2) = \cdots =k(\xi_{n!-1})$$ となることが分かります。
ところが『ガロアを読む』では、 $k(\alpha, \alpha_1, \cdots, \alpha_{n-1}) = k(\xi_1)$ などを示すのに、議論を必要としています。 $\xi$ の最小多項式の共役根とか、次数がどうの、といった議論です。 $\theta_0, \theta_1, \cdots, \theta_{n-1}$ の存在証明に使ったラングランジュの補間式を調べればいいだけなのですが。
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2017-08-19

『ガロアを読む』112, 113ページ
 順列・置換  置換とはある順列(permutation)から他の順列に移ることとし,順列を配列として,作用としての置換と区別している.しかしこの区別は論文の中できっちりとは守られていない.
  群の定義はない.
しかし,「いくつかの置換からなる群を作ろうと思うとき(原文では『置換を集め(grouper)ようとするとき』),それらの置換はすべて同一の順列より生じたものとしよう」とあり,
われわれが考える群では文字の最初の配置に何ら影響しない問題をつねに扱うので,最初どのような順列から出発しても同じ置換が得られるだろう.
 それゆえ置換 $S,T$ が同じ群にあれば置換 $ST$ も確かにこの群になければならない.
この文から見ると,ガロアにあっては,群とは,現在のように
    $S,T$ ならば $ST \in G$
    ($G$ は対称群 $S_n$ の有限部分群だから,これで十分)
ではなく,有限個の置換によって生成されたものと見ていたのではないか.

ガロアは、群という言葉を、現在の集合とほぼ同じような意味で使っていることがわかります。
それに、有限の置換群なのだから、「有限個の置換によって生成され」るのは当然で、倉田先生の意見はよくわかりません。以下のように解釈するのが妥当ではないでしょうか。

まず順列の空でない集合がつくられます。 $$\{A_1, A_2, \cdots, A_n\}$$ この集合から、$A_1$ から出発する置換の集合が作られます。 $$\left\{\binom{A_1}{A_1},\ \binom{A_1}{A_2},\ \cdots, \ \binom{A_1}{A_n} \right\}$$ $A_2$ から出発する置換の集合も作ることができます。 $$\left\{\binom{A_2}{A_1},\ \binom{A_2}{A_2},\ \cdots, \ \binom{A_2}{A_n} \right\}$$ この2つの置換の集合は、置換の集合として同じものになる、なぜなら、「われわれが考える群では文字の最初の配置に何ら影響しない問題をつねに扱う」からであって、そのように順列の集合がつくられる、と主張しています。 $$\left\{\binom{A_i}{A_1},\ \binom{A_i}{A_2},\ \cdots, \ \binom{A_i}{A_n} \right\}$$ において、$i$ を $1, \cdots, n$ の中から任意に選んでも、置換の集合としては同じになるということです。 言い換えると、任意の $i,j \in \{1,\cdots,n\}$ に対して、 $$\binom{A_1}{A_i} = \binom{A_j}{A_k}$$ となる $k\in \{1,\cdots,n\}$ が存在する、ということです。「最初どのような順列から出発しても同じ置換が得られる」とはこのことだと思います。 $$\binom{A_1}{A_3}\binom{A_1}{A_2}$$ という合成を考えます(右側の置換から先に実行するものとします)。 $$\binom{A_1}{A_3} = \binom{A_2}{A_i}$$ となる $i$ があるので、 $$\binom{A_1}{A_3}\binom{A_1}{A_2} = \binom{A_2}{A_i}\binom{A_1}{A_2} = \binom{A_1}{A_i}$$ となり、置換の合成に閉じていることが容易にわかります。単位元、逆元、結合法則、も容易に確認出来て、群の公理を満たすことが分かります。第1論文でガロアが「順列の群」とよんでいるのは、こうした性質を持つ順列の集合のようです。

さすが群論の祖とされる天才数学者です。置換群というものの本質的な性質を、的確に簡潔にとらえています。こういうふうに置換群を教えてもらえれば、私もずいぶん理解しやすかったとだろうと思います。

実際、この考え方によって、ガロア群が群であることの証明が容易になります。
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2017-08-10

倉田先生の『ガロアを読む』で、まず不可解に思ったのは以下の部分。

『ガロアを読む』45ページ
3. 式を不変にする部分群
 $\varphi = \varphi(X_1, \cdots, X_n)$ を $X_1, \cdots, X_n$ に関する体$k$上の有理式とする. $$\sigma\varphi = \varphi$$ となる,すなわち $\varphi$ を不変にする $\sigma \in S_n$ の全体 $H$ は,明らかに $S_n$ の部分群になる.

『ガロアを読む』47ページ
5. 量を不変にする部分群
相違なる根 $\alpha_1, \cdots, \alpha_n$ の $k$ 上の有理量 $\varphi(\alpha_1, \cdots, \alpha_n)$ とそれを不変にする $S_n$ の部分群 $H'$ の関係は 3. とまったく同様である.

$X_1, \cdots, X_n$ は文字。$\alpha_1, \cdots, \alpha_n$ は体$k$ 上の $n$次多項式の根で、重根はないもとしてます。$S_n$ は $n$次の対称群と42ページに書いてあります。量というのは値のことだと思われます。
つまり、$\varphi(\alpha_1, \cdots, \alpha_n)$ の値を変えない $\alpha_1, \cdots, \alpha_n$ の置換のすべてを集めたものが群になると主張していると読み取れます。証明は書いてません。それで証明を考えてみましたが、さっぱり分からない。ですが、どうやら一般的には群にならないことに気が付きました。

私が間違えているのか?それとも倉田先生が間違えているのか? いずれにしても、この部分は以降のガロア第1論文を読むには、たいして影響はないようです。 5. では、「ガロア群の部分群 $H'$ の関係は、」と直して読めば問題ありませんし。

追記 以前に見つけた反例があったので、書きます。

方程式 $x^4-10x^2+1=0$ の根は、
\[ \alpha_1 = \sqrt{2} + \sqrt{3},\quad \alpha_2 = \sqrt{2} - \sqrt{3},\quad \alpha_3 = -\sqrt{2} + \sqrt{3},\quad \alpha_4 = -\sqrt{2} - \sqrt{3} \]の4つです。 $\varphi = (\alpha_1 - \alpha_2)(\alpha_3 - \alpha_4)^2$ とします。 $\alpha$ の添え字の置換を2つ定義します。 \[\delta =\left( \begin{array}{cccc} 1 & 2 & 3 & 4\\ 3 & 4 & 1 & 2 \end{array} \right) \quad \tau =\left( \begin{array}{cccc} 1 & 2 & 3 & 4\\ 1 & 2 & 4 & 3 \end{array} \right) \]ただし、$\tau$ は自己同型になってないです。 \[(\alpha_1 - \alpha_2)(\alpha_3 - \alpha_4)^2 = 2\sqrt{3} \cdot (2\sqrt{3})^2 = 24\sqrt{3} \] \[\delta((\alpha_1 - \alpha_2)(\alpha_3 - \alpha_4)^2) = (\alpha_3 - \alpha_4)(\alpha_1 - \alpha_2)^2 = 2\sqrt{3} \cdot (2\sqrt{3})^2 = 24\sqrt{3} \] \[\tau((\alpha_1 - \alpha_2)(\alpha_3 - \alpha_4)^2) = (\alpha_1 - \alpha_2)(\alpha_4 - \alpha_3)^2 = 2\sqrt{3} \cdot (-2\sqrt{3})^2 = 24\sqrt{3} \] \[\tau\delta((\alpha_1 - \alpha_2)(\alpha_3 - \alpha_4)^2) = (\alpha_4 - \alpha_3)(\alpha_1 - \alpha_2)^2 = -2\sqrt{3} \cdot (2\sqrt{3})^2 = -24\sqrt{3} \] $\delta$ と $\tau$ は $(\alpha_1 - \alpha_2)(\alpha_3 - \alpha_4)^2$ の値を変えませんが、その合成 $\tau\delta$ は値を変えてしまいます。


しかし、この問題をひきずっています。

『ガロアを読む』49ページ
 命題1(ラグランジュの定理)――基本補題II 体 $k$ 上の $n$ ($\ge 1$) 次の多項式の根 $\alpha_1, \cdots, \alpha_n$ は重根をもたないとする. $\alpha_1, \cdots, \alpha_n$ の $k$ 上の有理量 $$\beta = \psi(\alpha_1, \cdots, \alpha_n), \quad \gamma = \varphi(\alpha_1, \cdots, \alpha_n)$$ において,$\beta$ を不変にするすべての $(\alpha_1, \cdots, \alpha_n)$ の置換によって $\gamma$ が不変ならば, $\gamma$ は $\beta$ の $k$ 上の有理式で表される.
 [証明] $\beta$ を不変にする $S_n$ の部分群を $H$ とし, $$S_n = H + \delta_1 H + \cdots + \delta_{k-1} H$$ とする.

証明は次のページに続いています。おそらく、ラグランジュはこの定理を $\alpha_1, \cdots, \alpha_n$ 不定元とする、有理関数体の場合に証明したのではないでしょうか。 $S_n$ をガロア群におきかえれば正しくなり、147ページにあります。

『ガロアを読む』147ページ
 命題2(基本補題II の類似) $f$ の根の $k$ 上の有理式 $\psi$ を不変にするガロア群の部分群を $H$ とする.$\alpha, \alpha_1, \cdots, \alpha_{n-1}$ の $k$ 上の有理式 $$\chi = \chi(\alpha, \alpha_1, \cdots, \alpha_{n-1})$$ が $H$ の置換によって不変ならば,$\chi$ は $\psi$ の $k$ 上の有理式で表される.すなわち $\chi \in k(\psi)$ .

命題1(ラグランジュの定理)を、代数体の場合にそのまま使うのは無理があります。しかし、 $\beta = \psi(\alpha_1, \cdots, \alpha_n)$ が対称群 $S_n$ のすべての置換で変化する場合は使えます。この場合が、まず必要になるので、この場合に限定した形で使うべきです。

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