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2017-08-10

倉田先生の『ガロアを読む』で、まず不可解に思ったのは以下の部分。

『ガロアを読む』45ページ
3. 式を不変にする部分群
 $\varphi = \varphi(X_1, \cdots, X_n)$ を $X_1, \cdots, X_n$ に関する体$k$上の有理式とする. $$\sigma\varphi = \varphi$$ となる,すなわち $\varphi$ を不変にする $\sigma \in S_n$ の全体 $H$ は,明らかに $S_n$ の部分群になる.

『ガロアを読む』47ページ
5. 量を不変にする部分群
相違なる根 $\alpha_1, \cdots, \alpha_n$ の $k$ 上の有理量 $\varphi(\alpha_1, \cdots, \alpha_n)$ とそれを不変にする $S_n$ の部分群 $H'$ の関係は 3. とまったく同様である.

$X_1, \cdots, X_n$ は文字。$\alpha_1, \cdots, \alpha_n$ は体$k$ 上の $n$次多項式の根で、重根はないもとしてます。$S_n$ は $n$次の対称群と42ページに書いてあります。量というのは値のことだと思われます。
つまり、$\varphi(\alpha_1, \cdots, \alpha_n)$ の値を変えない $\alpha_1, \cdots, \alpha_n$ の置換のすべてを集めたものが群になると主張していると読み取れます。証明は書いてません。それで証明を考えてみましたが、さっぱり分からない。ですが、どうやら一般的には群にならないことに気が付きました。

私が間違えているのか?それとも倉田先生が間違えているのか? いずれにしても、この部分は以降のガロア第1論文を読むには、たいして影響はないようです。 5. では、「ガロア群の部分群 $H'$ の関係は、」と直して読めば問題ありませんし。

追記 以前に見つけた反例があったので、書きます。

方程式 $x^4-10x^2+1=0$ の根は、
\[ \alpha_1 = \sqrt{2} + \sqrt{3},\quad \alpha_2 = \sqrt{2} - \sqrt{3},\quad \alpha_3 = -\sqrt{2} + \sqrt{3},\quad \alpha_4 = -\sqrt{2} - \sqrt{3} \]の4つです。 $\varphi = (\alpha_1 - \alpha_2)(\alpha_3 - \alpha_4)^2$ とします。 $\alpha$ の添え字の置換を2つ定義します。 \[\delta =\left( \begin{array}{cccc} 1 & 2 & 3 & 4\\ 3 & 4 & 1 & 2 \end{array} \right) \quad \tau =\left( \begin{array}{cccc} 1 & 2 & 3 & 4\\ 1 & 2 & 4 & 3 \end{array} \right) \]ただし、$\tau$ は自己同型になってないです。 \[(\alpha_1 - \alpha_2)(\alpha_3 - \alpha_4)^2 = 2\sqrt{3} \cdot (2\sqrt{3})^2 = 24\sqrt{3} \] \[\delta((\alpha_1 - \alpha_2)(\alpha_3 - \alpha_4)^2) = (\alpha_3 - \alpha_4)(\alpha_1 - \alpha_2)^2 = 2\sqrt{3} \cdot (2\sqrt{3})^2 = 24\sqrt{3} \] \[\tau((\alpha_1 - \alpha_2)(\alpha_3 - \alpha_4)^2) = (\alpha_1 - \alpha_2)(\alpha_4 - \alpha_3)^2 = 2\sqrt{3} \cdot (-2\sqrt{3})^2 = 24\sqrt{3} \] \[\tau\delta((\alpha_1 - \alpha_2)(\alpha_3 - \alpha_4)^2) = (\alpha_4 - \alpha_3)(\alpha_1 - \alpha_2)^2 = -2\sqrt{3} \cdot (2\sqrt{3})^2 = -24\sqrt{3} \] $\delta$ と $\tau$ は $(\alpha_1 - \alpha_2)(\alpha_3 - \alpha_4)^2$ の値を変えませんが、その合成 $\tau\delta$ は値を変えてしまいます。


しかし、この問題をひきずっています。

『ガロアを読む』49ページ
 命題1(ラグランジュの定理)――基本補題II 体 $k$ 上の $n$ ($\ge 1$) 次の多項式の根 $\alpha_1, \cdots, \alpha_n$ は重根をもたないとする. $\alpha_1, \cdots, \alpha_n$ の $k$ 上の有理量 $$\beta = \psi(\alpha_1, \cdots, \alpha_n), \quad \gamma = \varphi(\alpha_1, \cdots, \alpha_n)$$ において,$\beta$ を不変にするすべての $(\alpha_1, \cdots, \alpha_n)$ の置換によって $\gamma$ が不変ならば, $\gamma$ は $\beta$ の $k$ 上の有理式で表される.
 [証明] $\beta$ を不変にする $S_n$ の部分群を $H$ とし, $$S_n = H + \delta_1 H + \cdots + \delta_{k-1} H$$ とする.

証明は次のページに続いています。おそらく、ラグランジュはこの定理を $\alpha_1, \cdots, \alpha_n$ 不定元とする、有理関数体の場合に証明したのではないでしょうか。 $S_n$ をガロア群におきかえれば正しくなり、147ページにあります。

『ガロアを読む』147ページ
 命題2(基本補題II の類似) $f$ の根の $k$ 上の有理式 $\psi$ を不変にするガロア群の部分群を $H$ とする.$\alpha, \alpha_1, \cdots, \alpha_{n-1}$ の $k$ 上の有理式 $$\chi = \chi(\alpha, \alpha_1, \cdots, \alpha_{n-1})$$ が $H$ の置換によって不変ならば,$\chi$ は $\psi$ の $k$ 上の有理式で表される.すなわち $\chi \in k(\psi)$ .

命題1(ラグランジュの定理)を、代数体の場合にそのまま使うのは無理があります。しかし、 $\beta = \psi(\alpha_1, \cdots, \alpha_n)$ が対称群 $S_n$ のすべての置換で変化する場合は使えます。この場合が、まず必要になるので、この場合に限定した形で使うべきです。

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